肝の働き

 現代西洋医学のおける肝臓は物質を化学的に変化させているので、よく化学工場に例えられていますが主な働きは、胆汁を作る・尿素を作り腎臓に送る・小腸から吸収された養分を蓄えて、体が利用できる形に作り変えて全身へ送る・血液の貯蔵と循環量の調節・アルコールなどの有害物質の処理などがあり、重くて大きい臓器です。

 

しかし、現代医学と中医学とでは、同じ「肝」といっても全く同じものを指しているわけではないので、当然働きが違います。

中医学では、肝の主な働きとして『疏泄』と『蔵血』の2つがあります。

 

『疏泄作用』

 健康な人の気は常に体内をスムースに巡っています。

もし、気がスムースに流れず滞ってしまったり、過剰に頭面部へ昇ってしまうと様々な不具合が生じてしまいます。

そこで肝は「疏泄作用」によって気がスムースに流れるように促進や調節をしています。

この働きにより気は体内を滞りなく巡ることができます。

また、気が疏泄作用によりスムースに巡る事により、精神の安定が保たれたり、脾や胃の働きや胆汁の分泌が活発となり消化吸収が促進されます。

また、体内では気と血は一緒に巡っているので、気の巡りが良くなれば、血の巡りも良くなります。

このことから、肝の疏泄作用をまとめるとその主な働きは、

①気血循環の促進と調節

②消化の促進

③精神安定があげられます。

また、女性の妊娠や月経の来朝、男性の排精とも密接な関係にあります。

 

肝はストレスフリーのノビノビした状況を好み、ストレスや緊張を嫌います。

もしこのような状況が、過剰であったり、長期間続くと肝の働きに影響がでてしまい、「疏泄作用」が失調し、気血の巡りが悪くなったり、気血が頭面部へ過剰に昇り過ぎたりしてしまい、肩こり、胸や脇が張る、偏頭痛、イライラ、怒りっぽい、精神の抑鬱、下痢、便秘、生理痛、生理不順、無月経、吐血、ゲップ、口が苦い、黄疸、消化不良、などの症状が現れます。

 

『蔵血作用』

 全身を巡った血は肝へ集まってきて、貯蔵されます。

また、爪・筋・目などは肝に貯蔵されている血(肝血といいます)によって栄養されます。

更に、蔵血作用にはもう1つ血の循環量の調節という大切な働きも含まれます。

例えば、生理の後半や運動量が多い時、あるいは精神疲労や読書などで目を沢山使った時、過剰な出血時など、通常より多くの血を消耗してしまい、体内を循環している血の量が減ってしまった時は、肝に貯蔵しておいた血を放出し、血液循環量の減少を防ぎます。

もし肝血が不足してしまうと、めまい、疲れ目、目の乾き、筋のひきつりや萎え、震え、しびれ、爪の色が淡くもろくなる、生理の遅れ、生理期間が短くなる、生理の血量が減る、無月経、などの症状が現れます。

また、肝が血を溜められなくなると、生理血の量が増えたり、不正出血が起ります。

 

上記が代表的な肝の働きです。冒頭にも書きましたが、現代医学の「肝臓」とは、違うものだということがわかって頂けましたでしょうか?

このことから、例えば、お医者さんで「あなたは肝臓が悪い」と言われたからと言って、それは中医学でいっている「肝」とは別のお話になります。勿論、この逆も同じで、我々がいう「肝が悪い」とは、お医者さんがいっている肝臓ではありませんし、ましてや数値に現れるものではありません。

 

最後までお読み頂き有難うございました。

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