不正出血② =経間期出血=

不正出血②

 

=不正出血とは=

不正出血とは、通常の生理期間以外の時期に起る出血をいいます。

中医学における不正出血は、出血の時期により「経期延長」「経間期出血」「崩漏」などに分類されます。

今回は、「経間期出血」を紹介します。

 

ー経間期出血とはー

月経と月経の間(中間)に周期的に起こる出血で、例外はありますが出血量は生理時に比べると少ないのが一般的です。現代医学の排卵期出血(中間期出血)に相当するものです。

 

―中医学的排卵のメカニズムー

中医学では生理の直後の子宮の状態を「血海空虚」といいます。

これは子宮のエネルギー(正気)が空っぽの状態であることを意味します。

生理後、子宮のエネルギー(正気)は、陰のエネルギー(精血)から増してゆき、生理が終了して1週間後位に陰から陽のエネルギー(陽気)に転化をし、排卵が起こります。

この時に、陰のエネルギー(精血)の不足があり、そこへ熱なのどの要因が加わると経間期出血が起こることがあります。

 

経間期出血は、それを起こす病理メカニズムにより、幾つかのタイプに分類します。

代表的なものとしては、「潤い・栄養不足タイプ」・「イライラ、熱型タイプ」「水液停滞、熱型タイプ」「血液代謝障害タイプ」「貯血力不足、冷え型タイプ」などがあります。

今回は上記の5タイプを紹介します。

 

 

①「潤い・栄養不足タイプ」

前述したように、本病の病理メカニズムの根底には陰のエネルギー不足があります。

排卵期に陰のエネルギーが不足した状態で陽のエネルギーに転化してしまうので、陰のエネルギーは更に不足を起こします。

陰のエネルギーは、体を潤したり、栄養する働きがあるので、陰のエネルギーが不足してしまうと、気血が流れる経絡を栄養できず、経絡が脆くなり、血が漏れ出てしまい経間期出血となります。

 

《出血の特徴》

排卵日より前あるいは排卵日から出血が始まる。出血量は少い。

 

《随伴症状》

胸、手の平、足の裏のほてり・夕方になるとほてったり、発熱する・寝汗をかく・頬がほってたり赤い・喉が乾く・耳鳴り・難聴・めまい・健忘・精神疲労・膝や腰に力が入らない又はだるいなどの症状が現れます。

 

《養生法》

〈食養生〉

おすすめの食材は、かき、ゆりね、うめ、やまいも、あわび、など

 

〈ツボ〉

陰白:足の親指の爪の付け根の内側(出血時に押す)

三陰交:内くるぶしから指4本分上の骨の際

復溜:内くるぶしとアキレス腱の間の窪んだ所から、指3本分上

関元:ヘソから指4本分下

気海:ヘソから指2本分下

 

〈その他〉

・辛いものや体を温める性質のあるものの食べ過ぎには注意しましょう。

・大量の汗をかくのも控えましょう。

・睡眠はしっかりと摂って下さい。出来るだけ12時前に寝るように心掛けましょう。

・熱いお風呂はのぼせを悪化させますので、ぬるめの温度設定にしましょう。また、このタイプの方はサウナは向きません。

・過度な性行為は、陰のエネルギーを消耗させてしまいますので、控えめにしましょう

 

 

②「イライラ、熱型タイプ」

イライラや怒りは気の流れを滞らせてしまいます。気には温煦作用といって体を温める働きがあるので、気の流れが滞ることで過剰な熱が生まれます。血の流れはこの過剰な熱により勢いを増します。それに加え、排卵日以降は陽のエネルギーが強くなるので、さらに血流は勢いを強めます。この時に①で紹介したように、陰のエネルギーが不足していると、経絡が栄養不足の状態で脆くなっているので、出血が起こります。

 

《出血の特徴》

排卵日より前あるいは排卵日から出血が始まる。出血量はやや多い。血塊が混じることもある。

 

《随伴症状》

「潤い・栄養不足タイプ」の随伴症状に加え、生理の前に胸が張る・生理痛は痛みより張り感の方が強い・怒りっぽい・よく溜息やおならが出る・便秘がち・口が苦い・目の充血

などの症状が現れます。

 

《養生法》

「潤い・栄養不足タイプ」に加え、気を滞らせないようにしましょう。

〈食養生〉

生理直後は、かき、ゆりね、うめ、やまいも、あわび、など

生理前や排卵期前は、牛乳・牡蠣・あさり・しじみ・しゃこ・しらす・かに・みょうが・三つ葉・春菊・パセリ・セロリ・シソの葉・からしな・にら・ねぎ・小松菜・菊花・キャベツ・かいわれ大根・大根・かぶ・ラディッシュ・ザーサイ、みかん・グレープフルーツ・ゆず・キンカン・レモン・しょうが・こしょう・八角・ウイキョウ・ペパーミント・ローズマリー・タイム、など

 

〈ツボ〉

生理直後は、「潤い・栄養不足タイプ」で紹介したツボを押しましょう。

イライラしたときや、生理前や排卵期前は、上記のツボに「太衝」を加えます。

「太衝」:気を流す効果の高いツボです。足の甲にあり、親指と人差し指の付け根の骨が交わる所の少し前にあります。ツボを押している時に、一緒に深呼吸をすると効果が高まります。

 

〈その他〉

・「潤い・栄養不足タイプ」で紹介した事項を中心に、下記の事項も取り入れましょう。

・シソ茶・ジャスミン茶・ミントティー・タイムティー・ローズマリーティー・カモミール茶は気の流れを促進してくえます。イライラした時、生理前、排卵期の前におすすめのお茶です。

・ストレッチや深呼吸なども気を流す働きがあります。

・普段の生活では出来るだけストレスを溜めないようにしたり、ドライブ、ショピング、映画鑑賞など、ご自分にあったストレス発散法をみつけましょう。

・柑橘系の香りは「気」の巡りを改善させます。みかんやレモンの皮などを入浴剤としたり、お部屋の芳香剤としてみてもいいでしょう。また、アロマを代用する方法もあります。

 

 

③「水液停滞、熱型タイプ」

川などで水の流れが緩慢な淀みは、水が濁りやすく、ヘドロなどが発生します。これと同じように体の水液代謝が落ちてしまうと、「痰湿」という病理物質が発生します。

「痰湿」は状況により熱化する事があります。②で紹介したように熱は血液の流れを過剰に促進させてしまい、もともと陰のエネルギー不足の方は排卵期に出血が起こることがあります。

「痰湿」は体質的に脾が弱い方や、甘い物・油っこい物・味の濃い物の食べ過ぎや、お酒の飲み過ぎにより発生します。

 

《出血の特徴》

排卵日より前あるいは排卵日から出血が始まる。血液の色は深い紅色でやや粘りがある。オリモノが混じる。オリモノは黄色く、粘りがあり、臭いもあることが多い。

 

《随伴症状》

「潤い・栄養不足タイプ」の随伴症状に加え、平素から痰が多かったり、胸苦しい事がある(痰は黄色く粘っていることが多い)・軟便・月経時に悪心を伴うなどの症状が現れます。

 

《養生法》

「潤い・栄養不足タイプ」の養生法を中心に、水液代謝の改善もしましょう。

〈食養生〉

おすすめの食材は、かき、ゆりね、うめ、やまいも、あわび、など

甘い物・油っこい物・味の濃い物の食べ過ぎやお酒の飲み過ぎ、水分の摂り過ぎには注意

しましょう。

 

〈ツボ〉

生理直後は、「潤い・栄養不足タイプ」で紹介したツボを押しましょう。

排卵前は、上記のツボに「中極」「陰陵泉」を加えます。

2つのツボとも体の中の余分な水分を出してくれます。

「陰陵泉」:膝関節の内側のすぐ下で、押すと凹むところです。

「中極」 :臍と恥骨の間を5等分し、恥骨から上に5分の1の所。

痛気持ちいい程度にやや強めに押しましょう。

 

〈その他〉

・「潤い・栄養不足タイプ」で紹介した事項を中心に下記の事項も取り入れましょう。

・程よい運動で適度に汗をかきましょう。

・食べ物には十分注意して、冷たいもの、生ものなどの採りすぎには十分注意しましょう。また、雨に濡れたりしないよう湿気にも十分注意してください。

 

 

④「血液代謝障害タイプ」

中医学では血液循環の滞りを「瘀血」(おけつ)といいます。瘀血は正常な血の流れの邪魔をします。瘀血が子宮の近くに出来てしまうと、子宮を栄養した血が体幹へ戻るのを妨げてしまいます。前述したように排卵期には血の流れの勢いが強いため、瘀血により流れを妨げられた血は行き場がなくなり、出血が起こります。

代表的な瘀血の原因には、冷え、ストレス、難産、流産などがあります。

 

《出血の特徴》

排卵日より前あるいは排卵日から出血が始まる。血の色は紫暗・血の塊が混じる・生理痛

は刺す様な痛や張る様な痛みがある。

 

《随伴症状》

「潤い・栄養不足タイプ」の随伴症状に加え、顔色がどす黒い、肌や髪のかさつき、唇が

紫色、クマ・内出血ができやすい・シミやソバカスが出来やすい・日焼けの痕がなかな

か消えないなどがあります。

 

《養生法》

「潤い・栄養不足タイプ」の養生法に加え、血液循環の改善もしましょう。

〈食養生〉

生理後は、かき、ゆりね、うめ、やまいも、あわび、など

生理前は、うこん・なす・ピーマン・ほうれん草・たまねぎ・にら・にんにく・らっきょ

など

 

〈ツボ〉

生理直後は、「潤い・栄養不足タイプ」で紹介したツボを押しましょう。

生理前は、「三陰交」「血海」を痛気持ちいい程度に、やや強めに押しましょう。

血海:膝の皿の上の内側の角から親指の幅2本分上の所です。

 

〈その他〉

このタイプの方は、生理前と生理後の養生が重要になります。

生理後は「潤い・栄養不足タイプ」で紹介した養生法を中心に実践し、生理前は、血行が

滞らないように注意しましょう。

・ストレッチや適度の運動は「血」の滞りを改善しますので、是非行って下さい。

特に骨盤回りや下半身を重点的に行うとよいでしょう。

又、長時間座ったり、同じ姿勢でいることは、「血」の巡りを悪くさせますので気を付けてください。

 

 

⑤「貯血力不足、冷え型タイプ」

今までのタイプは全て、排卵前か排卵日に出血をしますが、このタイプだけは排卵後に出

血をします。

このタイプも他のタイプと同様に陰のエネルギー不足が根底にあるのですが、更にその影響が陽のエネルギー不足を招いてしまうことにより起こります。

陽のエネルギーが不足してしまうと、気の固摂作用という、汗・尿・血といった体内の水分が過剰に外に漏れ出さないようする働きが低下する事があり、そのため血を留めておけずに出血してしまいます。

 

《出血の特徴》

排卵期の後に出血が起こる・血色は淡い

 

《随伴症状》

「潤い・栄養不足タイプ」の随伴症状に加え、倦怠感・四肢や全身の冷え・寒がりなどの症状が現れます。

 

《養生法》

「潤い・栄養不足タイプ」に加え、特に排卵後は体を冷やさないように注意しましょう。

〈食養生〉

おすすめの食材は、かき、ゆりね、うめ、やまいも、あわび、など

逆に生野菜などの身体を冷やすものは避けましょう。

 

〈ツボ〉

生理直後は、「潤い・栄養不足タイプ」で紹介したツボを押しましょう。

排卵後は、お腹や腰を軽く温めてあげましょう。(温め過ぎはいけませんので、冷えない程度にしてあげるつもりで)

 

〈その他〉

このタイプは、陰の不足が影響して陽の不足が起っているので、陰のエネルギーを補うことが大事です。つまり、生理後に「潤い・栄養不足タイプ」の養生法をしっかりしてあげることがポイントです。陰のエネルギーが補えたら、自然と陽のエネルギーも回復してきます。

逆に温め過ぎてしまうと陰のエネルギーを損傷させてしまうおそれがあるので注意して下さい。前述しましたが、温めるというより冷やさないといった意識で十分です。

 

 

=最後に=

最後までお読み頂き有難うございました。

今回は不正出血の内、中間期出血を紹介いたしました。

中間期出血は、他の不正出血(崩漏や経気延長)とは病理メカニズムが異なり、陰のエネルギー不足に熱などの他の要因が加わり発症します。

その為、養生法も少し複雑になります。

養生法などで、ご不明な点がありましたら、専門家へご相談下さい。

 

最近のエントリー