不正出血① =経期延長=

=不正出血とは=

不正出血とは、通常の生理期間以外の時期に起る出血をいいます。

中医学における不正出血は、出血の時期などにより「経期延長」「経間期出血」「崩漏」などに分類されます。

今回は、「経期延長」を紹介します。

 

ー経期延長とはー

経期延長とは、生理の期間が7日間を超え、酷い場合には2週間にも及ぶものを指します。

中医学では、「経期延長」という他に、「月水不断」「月水不絶」「経事延長」などともいいます。

経期延長は、それを起こす病理メカニズムにより、幾つかのタイプに分類します。

今回は代表的な、「エネルギー不足タイプ」「水液代謝障害熱型タイプ」「潤い不足タイプ」「血液代謝障害タイプ」の4タイプを紹介します。

 

 

①「エネルギー不足タイプ」

特に脾のエネルギーが不足しているタイプで、「脾気虚」といいます。

虚弱体質であったり、過度の疲労や慢性病などにより引き起こされます。

中医学では、脾には「統血作用」といい、血液が余分に体外に出ないようにする働きがあります。

脾気虚になり「統血作用」が失調すると、血液を統血出来なくなり生理が止まりにくくなります。

 

《出血の特徴》

出血量は少なく、色も淡く、粘り気はあまりありません。

 

《随伴症状》

倦怠感、息切れ、眠気、浮腫み、軟便、食欲不振、食後の倦怠感や胃もたれ、など

 

《養生法》

エネルギーである気を補います。

〈食養生〉

いちご、ぶどう、とうもろこし、えだまめ、やまいも、じゃがいも、さつまいも、しいたけ、かぼちゃ、なつめ、はとむぎ、ほたて、うなぎ、あじ、など。

・エネルギーは食べ物から作られるので、出来るだけ食事はきちんと摂りましょう。

ただし、飲食物を消化するのにもエネルギーは消耗しますので、無理をして食べる必要はありません。また消化の良いものを食べるようにしましょう。

 

〈ツボ〉

陰白:足の親指の爪の付け根の内側

三陰交:内くるぶしから指4本分上の骨の際

気海:ヘソから指2本分下

関元:ヘソから指4本分下

合谷:手の甲で、親指と人差し指の付け根の骨が交わる手前のやや人差し指寄り。

足三里:すねの外側で、膝の関節から指4本分下で骨よりの筋肉が盛り上がっているところ。

 

〈その他〉

このタイプの人はエネルギーを過剰に消費すると症状が悪化してしまいます。

寝不足・過剰な肉体、精神疲労は出来るだけ避けましょう。

 

 

②「水液代謝障害タイプ」

中医学では「湿熱タイプ」といいます。

湿熱とは、体内に余分な水が溜まり、それが熱化してしまった状態です。イメージとしては、生温かいヘドロのような感じです。

中医学では熱は出血を起こさせると考えます。例えば、お風呂でのぼせて鼻血が出るのもこの1つです。

このことから、湿熱の熱が下腹部の血に影響を及ぼすと、生理が止まりづらくなります。

湿熱の原因としては、脂っこい物、甘い物、味の濃い物などの食べ過ぎや、お酒の飲み過ぎ、生理期間中や産後間もない頃の不衛生や性行為、脾気虚などがあげられます。

 

《出血の特徴》

出血量は少なく、色は暗い紫色で粘り気や臭いがあります。また、このタイプの方はおりものが多く、臭いが強かったり、黄色味がかっている場合もあります。

 

《随伴症状》

泥状便、胸苦しい、悪心嘔吐、胃のつかえ感、普段から痰が多い(痰の色は黄色味がかっていたり、粘りが強い場合がある)、身体が重だるい、喉の渇き、口が粘つく、など。

 

《養生法》

余分な水分を体外に排出します。

〈食養生〉

びわ、せり、だいこん、へちま、やまいも、とうがん、ぎんなん、れんこん、はとむぎ、ウズラの卵、海苔、パイナップル、など

・脂っこい物、甘い物、味の濃い物の食べ過ぎや、お酒の飲み過ぎに注意して下さい。

 

 

〈ツボ〉

陰白:足の親指の爪の付け根の内側

三陰交:内くるぶしから指4本分上の骨の際

中極:ヘソから指5本分下

陰陵泉:膝関節の内側のすぐ下で、押すと凹むところです。

 

〈食養生〉

・運動や入浴で軽く汗をかくと、余分な水分が排泄されます。

 

 

③「潤い不足タイプ」

中医学では「陰虚血熱タイプ」といいます。

潤す力が無いことにより熱が生じてしまい、その熱が女性器に関わる血液に影響すると生理が止まりづらくなります。

慢性病、失血、多産、過剰な性行為、もともと潤い不足の体質、辛いものや体を温める性質のある食べ物の食べ過ぎなどが原因となります。

 

《出血の特徴》

出血量は少なく、色は赤く、やや粘りがあります。

 

《随伴症状》

手のひら足の裏や胸のほてり、寝汗、頬が赤い、夕方や夜間になると熱っぽいまたは発熱する、喉は乾くが、水分はそれほど欲しないなど

 

《養生法》

〈食養生〉

かき、ゆりね、うめ、やまいも、あわび、など

 

〈ツボ〉

陰白:足の親指の爪の付け根の内側

三陰交:内くるぶしから指4本分上の骨の際

復溜:内くるぶしとアキレス腱の間の窪んだ所から、指3本分上

関元:ヘソから指4本分下

 

〈その他〉

・辛いものや体を温める性質のあるものの食べ過ぎには注意しましょう。

・大量の汗をかくのも控えましょう。

・睡眠はしっかりと摂って下さい。出来るだけ12時前に寝るように心掛けましょう。

・熱いお風呂はのぼせを悪化させますので、ぬるめの温度設定にしましょう。また、このタイプの方はサウナは向きません。

・過度な性行為は、潤す力を弱めてしまいますので、控えめにしましょう

 

 

④「血液代謝障害タイプ」

中医学では血液循環の滞りを「瘀血」(おけつ)といいます。

瘀血は正常な血の流れの邪魔をします。

瘀血が子宮の近くに出来てしまうと、子宮を栄養した血が体幹へ戻れなくなり体外に漏れ出てしまい生理期間が延びてしまいます。

冷えや難産、あるいは流産や人工中絶などが原因となることが多くあります。また長期間のストレスも原因となります。

 

《出血の特徴》

出血量は少なく、色は暗い紫色で血の塊が多く混ざります。

 

《随伴症状》

生理の前から前半に下腹部に強い痛みがある、顔色がどす黒い、髪や皮膚の乾燥やかさつき、唇が暗い紫色、クマ・内出血・シミ・ソバカスができやすい、日焼けの痕がなかなか消えないなど。

 

《養生法》

血液の流れを促進させます。

〈食養生〉

紅花、みょうが、黒きくらげ、よもぎ、なす、くり、シナモン、など

 

〈ツボ〉

陰白:足の親指の爪の付け根の内側

三陰交:内くるぶしから指4本分上の骨の際

血海:膝の皿の上の内側から指3本分上

水道:関元穴(潤い不足熱型タイプ参照)の左右に指3本分

 

〈その他〉

・軽い運動やストレッチは気や血液の巡りを促進させてくれます。

・長時間座ったり、同じ姿勢でいることは、「血」の巡りを悪くさせますので気を付けてください。

・冷えも「血」を滞らせますので注意して下さい。

 

 

最後までお読み頂き有難うございました。

代表的な分類を紹介いたしましたが、実際には上記以外のタイプや幾つかのタイプが混ざり合ったものなどもあります。

ご自身で判断できない場合や、あまり出血が長引くようであれば、一度専門家へご相談下さい。

お大事にどうぞ。

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