浜田山の鍼灸院

【不正出血③ =崩漏=】


=崩漏とは=

中医学では不正出血を出血が起こる時期により「経期延長」「経間期出血」「崩漏」に分類しています。

「経気延長」とは、生理がなかなか終わらず生理期間が延びてしまうものをいい、「経間期出血」とは、月経と月経の間(排卵日の前後)に起こる出血で、現代医学の排卵期出血、あるいは中間期出血に相当するものをいいます。(詳細については其々のページをご覧ください)

「崩漏」とは、上記以外の時期の出血や、ある時は「経期延長」で、ある時は「経間期出血」である場合をいいます。また、「経期延長」でも3週間にも及ぶものは「崩漏」に含めます。

 

「崩漏」は、出血量が多いものを「崩証」、出血量が少ないものを「漏証」に分類されますが、「崩証」から「漏証」へと移行したり、その逆もあったりするなど、両証の関係は密接でお互いに影響し合うため、一般には両証を合わせて「崩漏」と呼んでいます。

 

崩漏はそれを起こす病理メカニズムにより、幾つかのタイプに分類します。

代表的なものとしては、「エネルギー不足タイプ」・「強熱タイプ」「弱熱(冷却不足)タイプ」「血液代謝障害タイプ」などがあります。

今回は上記の4タイプを紹介します。

 

  1. 「エネルギー不足タイプ」(腎気虚・脾気虚)

エネルギー不足タイプは、更に「脾のエネルギー不足タイプ(脾気虚)」と「腎のエネルギー不足タイプ(腎気虚)」に分類されます。

脾には統血作用といって、血液が流出するのを防ぐ作用があります。

肉体疲労、過度な思い悩み、食事の不摂生などは、脾のエネルギー(脾気)を消耗させてしまい、統血作用が弱まると不正出血が起こります。

腎は「封蔵」といって、体にとって必要な物質を溜め込み、過剰に流出するのを防ぐ働きがあります。

加齢、発育不足、慢性疾患、過度な性行為などは腎のエネルギー(腎気)を消耗させてしまい、溜め込む力が弱まると不正出血が起こります。

 

《出血の特徴》

疲れると出血が起こる・突然多量に出血し、その後はダラダラと続く・出血量は少なく、色も淡く、粘り気はあまりない・生理が定期的に来ないなど。

 

《随伴症状》

〈脾のエネルギー不足〉

軟便または下痢をしやすい・食欲不振・食後の倦怠感や胃もたれなど。

〈腎のエネルギー不足〉

腰や膝が重だるい・聴力の減退・頻尿・性欲の減退・透明なオリモノが出るなど。

またこのタイプが進展すると、冷え症・寒がり・手足の冷えや、のぼせがでることがあります。

〈どちらにも共通な随伴症状〉

お腹に力が無く、撫でると気持ちがよい・倦怠感が強かったり、疲れやすい・息切れ・強い眠気・浮腫み・少し動いても汗が出るなど。

 

《養生法》

エネルギーである気を補います。

〈食養生〉

・エネルギーは食べ物から作られるので、出来るだけバランスのよい食事をきちんと摂りましょう。ただし、飲食物を消化するのにもエネルギーは消耗しますので、無理をして食べる必要はありません。また消化の良いものを食べるようにしましょう。

・冷え症の方は冷たい飲食物は避けましょう。

・おすすめの食材としては、豚肉(赤味)・鶏肉・烏骨鶏・大豆および大豆製品・小豆・山芋・サツマイモ・ピーナッツ

 はすの実・ なつめ・かぼちゃ・赤ピーマン・芽キャベツ・ブロッコリーなどがあります。

〈ツボ〉

〈両方のタイプに共通なツボ〉

陰白:足の親指の内側の爪の付け根

三陰交:内くるぶしから指4本分上の骨の際

関元:ヘソから指4本分下

〈脾のエネルギー不足〉

合谷:手の甲で、親指と人差し指の付け根の骨が交わる手前のやや人差し指寄り。

足三里:すねの外側で、膝の関節から指4本分下で骨よりの筋肉が盛り上がっているところ。

〈腎のエネルギー不足〉

太谿:内くるぶしの後ろの凹んだ所。アキレス健と内くるぶしの間

気海:ヘソから指2本分下

 

〈その他〉

このタイプの人はエネルギーを過剰に消費すると症状が悪化してしまいます。

寝不足・過剰な肉体疲労や精神疲労、冷えは出来るだけ避けましょう。

運動をされる場合は、最初は軽めの運動から始め、徐々に運動量を増やすようにしましょう。

 

 

②「強熱タイプ」(血熱)

中医学では余分な熱が血に影響したものを血熱といいます。

血熱は血液の流れを激しくし、出血を起こします。この血熱が下腹部の経絡に影響すると不正出血が起こります。

「強熱タイプ」は、血熱をうむメカニズムにより、「胃の熱タイプ」「イライラタイプ」「水液代謝障害タイプ」に分類されます。

 

〈胃の熱タイプ〉

辛い物の食べ過ぎや、体を温める薬の過剰服用などが原因となり、胃に余分な熱が生まれます。

〈イライラタイプ〉

激怒や過剰なストレスは気の流れ悪くさせ、気を滞らせます。気には体を温める働きがあるので、気が滞ってしまうと余分な熱が生まれます。

〈水液代謝障害タイプ〉

脂っこい物、味の濃い物、甘い物の食べ過ぎや過度の飲酒、あるいは生理期間中や産後間もない頃の不衛生や性行為は、水液代謝を悪くし痰湿という病理物質を生んでしまいます。上記が原因で生まれた痰湿は熱化をすることが多く、体内で余分な熱を生じてしまいます。

 

《出血の特徴》

色は深い赤で粘りがあり、臭味も強い。

〈胃の熱タイプ〉

辛い物の食べすぎで出血が悪化したり誘発される。

〈イライラタイプ〉

ストレスで出血が悪化したり誘発される。

〈水液代謝障害タイプ〉

甘い物、味の濃い物、脂っこい物の食べ過ぎや、過度の飲酒で出血が悪化したり誘発される、黄緑色のオリモノがでるなど。

 

《随伴症状》

〈胃の熱タイプ〉

便秘・口臭が強い・食べても直ぐにお腹が減るなど。

〈イライラタイプ〉

生理の前に胸が張る・生理痛は痛みより張り感の方が強い・怒りっぽい・よく溜息やおならが出る・便秘がち・口が苦い・目の充血など。

〈水液代謝障害タイプ〉

泥状便、胸苦しい、悪心嘔吐、胃のつかえ感、普段から痰が多い(痰の色は黄色味がかっていたり、粘りが強い場合がある)、身体が重だるい、喉の渇き、口が粘つくなど。

 

《養生法》

熱を取り去る養生をします。

出血の特徴で記載した、出血を悪化や誘発させる食事や生活は避けましょう。

〈食養生〉

〈各タイプに共通なおすすめの食材〉

豆腐・レンコン・にがうり・冬瓜・へちま・キュウリ・すいかなど。

〈胃の熱タイプ〉

便秘気味の人は繊維質をとり、胃腸に熱を溜めないようにしましょう。

〈イライラタイプ〉

生理前やイライラした時は、牛乳・牡蠣・あさり・しじみ・しゃこ・しらす・かに・みょうが・三つ葉・春菊・パセリ・セロリ・シソの葉・からしな・にら・ねぎ・小松菜・菊花・キャベツ・かいわれ大根・かぶ・ラディッシュ・ザーサイ、みかん・グレープフルーツ・ゆず・キンカン・レモン・しょうが・こしょう・八角・ウイキョウ・ペパーミント・ローズマリー・タイムなど。

〈水液代謝障害タイプ〉

びわ、せり、だいこん、へちま、やまいも、とうがん、ぎんなん、れんこん、はとむぎ、ウズラの卵、海苔、パイナップルなど

 

〈ツボ〉

〈どのタイプにも共通のツボ〉

陰白:足の親指の内側の爪の付け根

三陰交:内くるぶしから指4本分上の骨の際

気海:ヘソから指2本分下

〈胃の熱タイプ〉

内庭:足の甲で人差し指と中指の付け根の間

合谷:手の甲で、親指と人差し指の付け根の骨が交わる手前のやや人差し指寄り

〈イライラタイプ〉

行間:足の甲にあり、親指と人差し指の付け根の間。ツボを押している時に、一緒に深呼吸をすると効果が高まります。

〈水液代謝障害タイプ〉

中極:ヘソから指5本分下

陰陵泉:膝関節の内側のすぐ下で、押すと凹むところです。

 

 

③「弱熱(冷却不足)タイプ」(陰虚)

前述しましたが、熱が血液に影響すると出血が起こります。

慢性病、多産、過剰な性行為やもともと潤い不足の体質の方は、体を冷やす働きが低下してしまい、熱が発生してしまいます。この熱が下腹部の経絡に影響すると不正出血が起こります。ただし、このタイプの熱は、「陰虚熱」といい、「強熱タイプ」の熱とは性質が異なります。

 

《出血の特徴》

出血量は少なく、色は赤く、やや粘りがあります。

 

《随伴症状》

手のひら足の裏や胸のほてり・寝汗・頬が赤い・夕方や夜間になると熱っぽい、または発熱する・喉は乾くが、水分はそれほど欲しないなど。

 

《養生法》

〈食養生〉

・辛い物は熱を生みやすい食材が多いので過剰に採らないように注意しましょう。

・おすすめの食材としては、いちご・うめ・ゆりね・山芋・オクラ・黒豆・黒ごま・黒米・くわの実・ナマコ・かきなどがあります。

〈ツボ〉

陰白:足の親指の内側の爪の付け根

三陰交:内くるぶしから指4本分上の骨の際

復溜:内くるぶしとアキレス腱の間の窪んだ所から、指3本分上

関元:ヘソから指4本分下

照海:内くるぶしのすぐ下の凹部

 

〈その他〉

・サウナや運動などで大量の汗をかくのは控えましょう。

・睡眠はしっかりととって下さい。出来るだけ12時前に寝るように心掛けましょう。

 寝不足は厳禁です。

・熱いお風呂はのぼせを悪化させますので、ぬるめの温度設定にしましょう。

・過度な性行為は、冷却力を弱めてしまいますので、控えめにしましょう

 

 

④「血液代謝障害タイプ」(血瘀)

冷えや気の滞り(気滞)が血液に影響すると、血流が悪くなり滞りが生じます。この滞りの事を中医学では「瘀血」といいます。

瘀血が出来ると、正常な血液の流れを邪魔してしまい、血脈(血液の通路、現代医学の血管に類似)から正常な血液が漏れ出てしまいます。もし、下腹部に瘀血が出来ると不正出血が起こる場合があります。

瘀血の原因としては、冷え、難産、流産、人工中絶、長期にわたるストレスなどがあります。

 

《出血の特徴》

出血量は少なく、色は暗い紫色で血の塊が多く混ざります。

 

《随伴症状》

生理の前から前半に下腹部に強い痛みがある・顔色がどす黒い・髪や皮膚の乾燥やかさつき、唇が暗い紫色・クマ・内出血・シミ・ソバカスができやすい・日焼けの痕がなかなか消えないなど。

 

《養生法》

血液の流れを促進させます。

〈食養生〉

生理の始まる前に、紅花・みょうが・黒きくらげ・よもぎ・なす・ニラ・ニンニク・くり・シナモン・ウコンなど

〈ツボ〉

陰白:足の親指の内側の爪の付け根

三陰交:内くるぶしから指4本分上の骨の際

血海:膝の皿の上の内側から指3本分上

水道:関元穴(潤い不足熱型タイプ参照)の左右に指3本分

 

〈その他〉

・軽い運動やストレッチは気や血液の巡りを促進させてくれます。

・長時間座ったり、同じ姿勢でいることは、血液の巡りを悪くさせますので気を付けてください。

・冷えやストレスも血液を滞らせますので注意して下さい。

 

 

最後までお読み頂き有難うございました。

代表的な分類を紹介いたしましたが、実際には上記以外のタイプや幾つかのタイプが混ざり合ったものなどもあります。

ご自身で判断できない場合や、あまり出血が長引くようであれば、一度専門家へご相談下さい。

お大事にどうぞ。