Ⅰ、気の血に対する働き
気は血に対してどのような働きをしているのでしょう?
中医学では「気為血之帥」といい、気は血に対して多くの働きをしております
では、一つ一つ紹介してゆきましょう。
①「営気」という気と水が合わさって血となります。
つまり、気は血の原料となっているわけです。
ですから、もし気が不足してしまうと、血の生成量が減ってしまい、気も血も両方不足した状態になってしまいます。
この状態を気血両虚といいます。
不眠症や鬱病の患者さんなどにこのタイプの方がおられます。
②血は全身の隅々まで巡るわけですが、血単体では動くことはできません。
実は血を動かす原動力となっているのも「宗気」という気です。
もし気が不足してしまうと血を動かす原動力がなくなってしまうので血の循環が悪くなってしまいます。
この状態を気虚血瘀といいます。
虚弱体質で血行も悪いイメージです。
③寒いと血液循環が悪くなるのはイメージできると思いますが、寒くても血液循環が悪くならないように、血を温めているのも「陽気」という気です。
もし陽気が不足してしまうと、血を温めることが出来ないため、血は冷えてしまい循環が悪くなってしまいます。
この状態を寒凝血瘀といいます。
また寒凝血瘀は陽気が不足していなくても、体を極端に冷やしたりしても起こります。
冷えによる肩こりや、冷えによる足腰の痛みなどはこのタイプが多くみられます。
④血が体内から大量に出血してしまうと大変です。
このような事にならないように血の出血を抑えているのも気の固摂作用という働きです。
もし気が不足してしまうと固摂作用が弱まり、鼻血や女性の不正出血などの各種出血症状が現れてしまいます。
このような状態を気不統血といいます。
また血に対する固摂の働きは主に脾が行うので、出血症状に加え、脾の特有の症状がある場合は脾不統血ともいいます。
Ⅱ、血の気に対する働き
血は、「血為気之母」といわれ、血も気に対して色々な働きをしています。
今度は血が気に対してどのような働きをしているか紹介してみましょう。
気は運動性がとても高い物質なので単体では体の外へ飛び出してしまいます。
そこで、気は陰性の物質である血や水にくっついていることにより、体内に留まっております。つまり、気は血や水と一緒に体内を巡るのです。
血脈内ではあたかも血が気を載せている様なので、「血載気行」といわれます。
逆にいえば血が気を体内にひきとめているといってもよいでしょう。
もし気か血の一方に滞りが生じてしまうと、一緒に体内を巡っているわけですから、気も血も両方とも滞ってしまう事があります。
この状態を気滞血瘀といいます。
ぎっくり腰などの急性の痛みはこのタイプが多くみられます。
また、「宗気」が血の原動力となっているわけですが、「宗気」は誰かに栄養してもらわなければその働きができません。
そこで、「宗気」はくっついている血に栄養してもらっています。
気と血の関係は、車の車体とエンジンをイメージしてもらえば解りやすいかと思います。
車体が血で、エンジンが気です。
車は車体だけでは動きません。動くためにはエンジンが必要です。
しかし、エンジンもエンジンだけでは動くことができません。車体に載って初めて動くことが出来るわけです。
気血同様、車もエンジンと車体がくっついて動くことが出来るわけです。
しかも、エンジンは燃料がないと動きませんので、車体にある燃料タンクから燃料をもらっています。これは、宗気が血により栄養されていること同じ感じですネ。
少しはイメージ出来たでしょうか?
また、気と血はくっついて体内を巡っていますから、もし大量に出血をしてしまうと、気も大量に体外に流出してしまいます。
このことを中医学では「気随血脱」といいます。
多量の出血をして意識がなくなったり、力が入らなくなったりするのはこのためです。
ⅰ:気と津液の関係
①津液の生成代謝で紹介いたしましたが、津液は飲食物より脾で作られました。
これは脾の気によって作られます。つまり、津液は飲食物を原料に気によって作られます。
②津液が全身を巡るのも気の働きによって巡る事ができます。
③津液が過剰に体外に流出しないように留めておくのも気の働きによるものです。
上記のことから、気が失調してしまうと、津液の不足・、津液の滞り・過剰な流出が起きてしまいます。
また、気と津液は一緒に体内を巡りますので、大量に汗をかくなどして津液が多く体外に流出してしまうと、汗(津液)と一緒に気まで体外に漏れ出てしまい、津液の不足だけではなく、気の不足までまねいてしまいます。
他には、津液の滞りが長期間続くと気の流れの邪魔をして、やがては気の滞りまでまねいてしまいます。
ⅱ:津液と血の関係
血は気と津液を原料に作られます。つまり、津液は血の原料の一部になっております。
このことから、大量に汗をかくなどして、津液が多く体外に流出してしまうと血の不足につながってしまいます。
上記のように気・血・津液は密接な関係にあります。
まさに、「ギブ アンド テイク」切っても切れない関係です。
ですからどれか一つに不調が現れれば、他の物質にも影響が出ることは珍しくありません。
治療の話でいうと、不調がどれか1つの内に治療をするのと、放っておいて複数の物質の不調となってしまった場合とでは、一般的には不の物質の数が少ない方が短期間で済みます。おかしいなと思ったら早めにご相談下さい。
最後までお読み頂き有難うございました。