いきなりですが、『血』という字を皆さんは何と読みますか?
普通は〔ち〕と読みますよね。でも中医学では『血』を常に〔けつ〕と読みます。
同じ『血』という字ですが、現代医学と中医学ではその読み方が若干異なります。
しかも字だけではなく、働きも中医学と現代医学とでは全く同じではありません。
ですから、中医学の『血』と現代医学の『血』は全くの別物とご理解下さい。
ここでは、『血』がどこで作られてどのように体内を巡るのか、「血の生成と代謝」を紹介します。
「血の生成と代謝」は、生成・運搬・貯蔵の3段階の過程に分けることができます。
【血の生成】
中医学では、飲食物を「水穀」といいます。水穀は口から体内に入り、食道を通り、「胃」でドロドロの粥状にされ「小腸」へ送られます。
「小腸」は送られてきた水穀を更に消化し、エキスと糟粕(尿や大便となるカス)に分けます。
エキスとは中医学では「水穀の精微」といい、「脾」に運ばれてゆきます。
そして「脾」で「水穀の精微」を原料に『血』が作られます。
もし、脾の働きが弱ってしまうと『血』の生産量が減ってしまい、血の不足を起こしてしまいます。
このような状態を「血虚」といいます。
ここまでが『血』の生成の過程です。次に運搬です。
【血の運搬】
「脾」で作られた『血』は、先ず「心」へ運ばれ、そこから全身へと送られます。
この時「肺」も『血』を全身へ運ぶ働きを助けます。
この「心」と「肺」が『血』を全身へ運ぶ原動力となっているのが、以前「気の働き」で紹介した、「推動作用」であり、「宗気」であります。
もし、「心」や「肺」の働きが弱ってしまうと、全身へ「血」が運ばれなくなってしまい、各部で血の不足が起ってしまいます。
さて、現代医学では、『血』が流れる管を血管と言いますが、中医学では「血脈」といいます。
この時「脾」は『血』が血脈から漏れ出ることなく、スムースに全身を巡るように調整しています。
この働きを「脾の統摂血作用」といいます。
この働きが弱ると、「脾不統血」といい、出血傾向になってしまい、不正出血などが起ってしまいます。
ここまでが『血』の運搬の過程です。次に貯蔵です
【血の貯蔵】
全身を巡った『血』は、「肝」に集まりここで貯蔵されます。
ここに貯蔵される『血』は、体内の『血』の循環が減ってしまった時や体内で通常より多く『血』が必要になった時などに使われます。
ここでの「肝」の働きは、「血の貯蔵と循環量の調節」になります。
また、目・爪・筋などは、「肝」が貯蔵している『血』により栄養されます。
もし、「肝」で貯蔵される「血」が減ってしまうと、筋肉がひきつったり、目が乾燥したり、疲れ目や爪の色が悪くなったりしてしまいます。更に進行すると女性では生理の遅れや閉経といった症状も現れてきます。
又、肝には疏泄作用といって、間接的に「血」の巡環を促進させる働きがあります。
もし肝が失調して疏泄作用が低下してしまうと、「血」が滞ってしまうことがあります。
以上が「血の生成と代謝」です。様々な臓器が関与していることがお分かりになったと思います。
このように、血の生成代謝は様々な臓器により行われているので、もしこれらの臓器の働きが低下してしまうと、「血」にも多大な影響がでてまいります。