中医学には「天人相応」といい、人も自然の一部であるという考え方があります。
ですから、人体は常に季節や気象の影響を受けていると考えています。
健康な方は季節や気象の影響を受けても不調を感じることはありませんが、ご老人や抵抗力が弱っている方は、自然界の影響に対応できず体調を崩してしまいます。
季節の養生法とは、この様な自然界からの影響に上手に対応し、健やかに過ごす方法です。特に体の弱い方や、季節の変わり目によく体調を崩す方にはおすすめいたします。
今回は中医学の観点から春の養生法を紹介します。
尚、春の花粉症については、「花粉症対策」をご覧ください。
《春が人に与える影響とは?》
自然界では、春は植物を発芽させたり、草木の成長を盛んにし、枝や葉が天高く伸びてまいります。また動物も冬眠から目覚める季節です。
春は生き物を活動的にさせる季節です。
ですから、人間の身体も春になると新陳代謝が活発になり、体内に溜まった老廃物が外に出てきて、吹き出物や肌荒れ、口内炎などが起こり易くなります。
又、冬の間は寒い日が続きますが、春になり温かくなると、気分も陽気になり、なんとなく落ち着かなくなってきたりします。
中医学では春の影響を一番受けやすい臓器は「肝」と考えています。
肝は気血の巡りを良くする働きがあるのですが、春の影響を受け、その働きが活発になり過ぎてしまうと、気血が頭に昇り過ぎたりします。草木と同様に上に昇りやすくなってしまうわけです。
すると、めまいや疲れ目、気分が高揚して落ち着かなくなったり、精神が不安定になったりします。
その結果、イライラしたり落ち込んだりしてしまい、春の鬱病にかかってしまわれる方もおられます。春はストレスを感じやすい季節といってもよいでしょう。
上記が春の主な影響です。
まとめると、春は動物が冬眠から目覚め、植物は新芽を出し成長を始める季節です。全ての生き物が活発になってきます。
人間の身体も活発になってくるのですが、油断をすると活発になり過ぎてしまい、気血が昇り過ぎてしまい、めまいや疲れ目、気分の高揚などが起きたり、新陳代謝が活発になり口内炎や吹き出物、肌荒れが起こりやすくなります。
また、精神が不安定になったり、イライラしたり、ストレスを受けやすくなったりと精神的にも影響を受ける季節といえます。
そこで養生としては
春は気血の昇り過ぎに注意:
運動は気血の巡りをよくしてくれて良いのですが、気血が昇りやすい春は過剰な運動は頭に気血が昇り過ぎてしまいますので注意しましょう。
ストレスは要注意:
春はストレスを受けやすく、肝はストレスに弱い臓器です。
先程も書きましたが、肝がストレスを受けると気血は更に上に昇りやすくなってしまいます。
このことから、春はイライラや怒ることは出来るだけ避けて、ストレスを受けたら上手に気分転化をしましょう。
特にイライラしやすい方は要注意です!
深呼吸やストレッチなどをして体内の気を巡らせてあげましょう。
足の甲にあり親指と人差し指の骨が交わる所の前にあるのが「太衝」というツボです。
イライラして滞った気を流してくれたり、昇り過ぎた気を降ろしてくれるツボです。
ストレスを感じたら少し強めに押してみましょう。
気分が落ち込んだ時は:
鼻の頭から頭のてっぺんに向かい伸ばした線と、両耳の先端を結んだ線が交わる所が「百会」というツボです。
落ち込んだ気を持ち上げてくれますので、落ち込んだ時や頭がスッキリしない時はおすすめのツボです。
消化器系に注意:
肝が障害を受けると消化器に障害をもたらします。
そのような時は後述の食養生を参考に消化器系をいたわってあげましょう。
※春の食養生 =春におすすめの食材=※
省酸増甘、以養脾気
これは中国の養生法にある言葉で、酸味を少なめにし、甘みを少し増やす味付けをすることで、消化吸収機能を助けるといわれています。
先程も書きましたが、肝が障害を受けると消化器に障害をもたらします。消化吸収機能が弱ってきたら上記の様な味付けにしてみましょう。
春の鬱病や気分の落ち込みには季節の食材・雑穀・豆類を
春は草木などの生命力が高まる季節です。
気分が落ち込んだり、やる気が出ない時は春野菜などの季節の食材で上昇するパワーをもらいましょう。春の鬱予防にもおすすめです。
又、このタイプの方はエネルギーが不足している方に多くみられます。
大豆などの豆類や、玄米などの雑穀類はエネルギーを補い元気をだしてくれます。
老廃物の排出には野菜などの芽を
宋の時代の有名な薬膳で「山家三脆」という料理があります。
これは、クコの芽・春たけのこの穂先・発芽したてのしいたけなどの春野菜の芽を使って作る薬膳です。
春は新陳代謝が活発になり老廃物が出やすくなります。
老廃物の排出の促進や肌荒れには野菜などの新芽がおすすめです。
例えば、新茶・わらび・ふきのとう・ふき・たらの芽・せり・たけのこ・ほうれん草・かいわれ菜などがあります。
ストレスや気の滞りには香りの強い食材や旬の野菜を
春はストレスを受け気が滞ったり、気血が昇りやすい季節です。
漢方では、シソ・ミント・にら・セロリ・三つ葉・春菊・うこん・菊花・陳皮・柑橘類などの食材は、滞っている気を流す働きがあるといわれます。
食す時は香りも楽しむと更に効果が高まります。
イライラ・目の充血・自律神経の乱れなどにどうぞ。
その他の肝を補う食材
あさり・しじみ・はまぐり・かき・ほうれん草・アスパラなど
春は控えた方がよい食材
・早春は体が活動的になり始める時なので、体を冷やす生ものや冷たい食べ物は控えましょう。
・春はふきでものなどが出やすいので、カニや背の青い魚は炎症を悪化させてしまいますので注意して下さい。
・消化器系が弱っている方は、ごぼう・高カロリー食・もち米など消化に悪い食材は控えましょう。
・春は気血が高ぶりやすいので、刺激物や肉、高脂肪の食材も控えましょう。
食養生については、現在通院をされておられる方は、担当医にご相談されてから実行なさって下さい。
最後までお読みいただき有難うございました。
季節の特徴をよく理解し、上手に対応し気持ちの良い春をお過ごしください!!