気の生成と働き

 日本語には、気持ち・やる気・元気・天気・気をもむ・気になる・気がきかない・・・などなど、気という字を使った言葉が数多くありますし、皆さんもよく使っていると思います。

でも意外と気の事を知っている人は少ないと思います。

気っていったい何でしょう?

 

 気は顕微鏡やあらゆる科学の力をもっても見る事や数値に表すことが出来ません。

その為、現代医学では気の存在は無視されておりますが、中医学では、気はとても重要な物質として考えています。

この気を物質として捉えることが、中医学を理解するうえで重要なポイントになります。

皆さんも気を物質として考えると気の概念が少しわかりやすくなるかもしれません。

気について書きだすと、大変長くなってしまうので、今回は気が何処で何を原料に作られ、どのような働きがあるのかを紹介しましょう。

 

 先ず、気の原料となるのは下記の3つです。

①   食物から得られる栄養素

②   酸素 

③   生まれた時から持っているエネルギー

 

 では、それぞれについて細かく紹介していきましょう。

 

①   飲食物から得られる栄養素

 人間が生きていく為には食べ物を食べ、内臓で消化し栄養を得て、エネルギーを作らなければなりません。その概念は現代医学も中医学も同じです。

ただ、細かいことが違ってきます。

先ず、中医学では飲食物を「水穀」といいます。

口から入ってきた「水穀」は胃と脾で消化され、「水穀の精微」作られます。

「水穀の精微」とは、水穀から吸収された栄養素と捉えていただければ結構です。

又、一部の気は脾で作られます。ここで作られる気は「営気」と呼ばれ、体を栄養する働きをしたり、「血」の原料になります。

 

②   酸素 

 中医学も現代医学と同様に、飲食物の他に酸素を体内に取り入れます。

ただ中医学では、酸素とは言わずに、「自然界の清気」といいます。

「自然界の清気」は概ね酸素と同様の物と捉えていただいて結構です。

「自然界の清気」は肺によって吸収され、肺と腎により体内に取り入れられます。

ここで、先程脾で吸収された「水穀の精微」と肺が吸い込んだ「自然界の清気」が合わさり、「宗気」という気が作られます。

この「宗気」は、血や水などを体の隅々まで運んだり、臓腑と言われる内臓の働きを促進する働きがあります。

 

③    生まれた時から持っているエネルギー

 赤ちゃんがお母さんのお腹から産まれ出てきて時には、既に赤ちゃんの体の中にはエネルギーがある程度溜まっています。この赤ちゃんが既に持っているエネルギーを中医学では「先天の精」といいます。この「精」は腎に蓄えられているので「腎精」ともいわれます。

それに対して、先程脾で吸収された「水穀の精微」と、肺が取り入れた「自然界の清気」は「後天の精」といわれます。

さて、「後天の精」は全身を巡り各部に栄養を与え、あまったものは腎へ行き、腎に蓄えられている「先天の精」と合わさり、残りの気を作ります。

これらの気は「衛気」「元気」と呼ばれ、前者は風邪などのウィルスの様な体の外から病気を引き起こす原因から身を守ったり、病気を体の外に追い出す働きをします。

後者は生きる為のエネルギーの根源となります。

 

 

 これらの気は常に全身を巡っていないとその働きが発揮されません。

気を全身に巡らせる働きは、肝や肺が行っております。

このように気が生成され、全身を巡るためには、多くの臓腑の働きが必要となります。

また逆にこれらの臓器が働くためには、各臓腑に対して気の働きが必要になってきます。

このように気と臓器はお互いに助け合い生命活動を維持しております。

 

 では次にその気の働きの代表的なものを紹介しましょう。

①    内臓の働きの促進や血や水などを流し体の隅々まで運ぶ働きで、「推動作用」といいます。

②    体の隅々まで栄養する働きで、「栄養作用」といいます。

③    体に必要な物や、汗・尿・血などが大量に漏れ出さないよう体内に留めている働きで「固摂作用」といいます。

④    体や内臓を温める働きで「温煦作用」といいます。

⑤    病気の侵入を防いだり、病気と闘い病気を追い出す働きで、「防衛作用」といいます。

⑥    気血水を相互に変化させたり、水から尿や汗などを作る働きで「気化作用」といいます。

以上が代表的な気の働きですが、勿論上記以外にも様々な働きがあります。

また、これらの働きは、気が過不足な全身をスムースにくまなく巡ることによって行われます。

ですから、もし気が不足したり、滞ると何らかの体調不良が起こるわけです。

 

最後までお読みいただき有難うございました。

 

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