更年期障害

更年期障害

テレビのCMなどでも、女性は7年ごとに節目があるという漢方の考え方が紹介されています。

例えば、7×2=14で、14歳までに初潮を迎え、7×7=49で、49歳で閉経という考えです。

更年期障害は閉経の前後各5年間に見られ、人により症状の軽重がありますが、重い方はかなり辛い思いをされておられます。

現代医学では、更年期障害は閉経の前後にホルモンのバランスが大きく崩れることにより起こる症候群と説明されております。

ところで、更年期障害とは現代医学の名称です。

では、中医学では更年期障害をどのように考えるのでしょうか?

 

本題に入る前に、女性の成長と老化について、中医学ではどう考えているのかから簡単に紹介しましょう。

 

【7の倍数と女性の成長と老化】

中医学では人間が生きていく為のエネルギーは腎に蓄えられていると考え、

このエネルギーを「精」あるいは「腎精」と呼んでいます。

生まれたばかりの赤ちゃんでも腎には「精」がしっかりと蓄えられております。

しかし大人と比べると、赤ちゃんの「精」の量は少なく、乳を飲んだり眠ることにより、「精」は徐々に増してゆきます。

「精」とは、一口に言うとエネルギーですが、その代表的な働きに成長と生殖があるので、赤ちゃんの腎に蓄えられている「精」が増えてくると同時に、赤ちゃんの身体は成長してゆきます。

その後も「精」は増え続け、女性の場合はその成長の途中の、7×2の14才位になると、「精」の生殖の働きで、初潮を迎えます。

そして7×3の21才から女性は成熟期には入ります。

やがて月日が流れると、こんどは腎に蓄えられていた「精」が減り始めます。これを老化といいます。

女性の場合は7×5の35才から、少しずつ老化が始まり、7×6の42才から加速し始め、7×7の49才頃閉経を迎えます。

身体は腎に蓄えられている「精」が減ることによって様々な症状が現れます。この症候群が現代医学の更年期障害と同様の症状になります。

また、精の減少は体を構成している「気血水」にも強く影響を及ぼしますので、一口に更年期障害といっても、「気血水精」のどれが強く影響を受けたかによって幾つかのタイプに分類され、治療法や養生法が異なります。

 

また、更年期の症状は若い頃の生活習慣や健康状態が深く関係する事が多く、

若い時に暴飲暴食・睡眠不足・不摂生な生活を繰り返していると、「精」が早期、或いは急激に減ってしまい、早く更年期を迎えてしまったり、更年期の症状が辛くなってしまいます。

ですから、まだ若いからと体を痛めつけていると、後で辛い思いをしてしまう事もあります。

また、更年期を迎える前の体質や生理の様子で、どのような更年期を迎えるか、ある程度予想ができますので、まだ更年期ではないという方も是非参考にされ、ご自分にあった養生法を実践されるとよろしいかと思います。

 

今回はそういった事も含めて、更年期障害をとりあげてみたいと思います。

 

中医学では、更年期障害を幾つかに分類をしますが、今回は比較的代表的な分類を紹介します。

 

【代表的な更年期のタイプ】

①    『イライラ』タイプ 

②    『くよくよ』タイプ 

③    『冷え』タイプ 

④    『ほてり』タイプ 

 

①『イライラ』タイプ 

中医学でいう「気帯証」といわれるタイプです。

これは、気の流れが滞ってしまうことによって起こるタイプです。

中医学では、イライラなど過度なストレスなどは「気」の巡りを妨げ、「気」を滞らせてしまうと考えます。

ストレスが溜まりがちな生活を送っていたり、多忙でいつも気持ちが張り詰めていたり、もともとストレスに弱く、怒りがちな人、不規則な生活を送っていた人によくみられるタイプです。

 

=生理痛の特徴=

・生理前から生理中に張ったような痛みがある。どちらかというと、痛みより張感のほうが強い。

・生理が始まると楽になる。

・痛む部位を揉んだりしても気持ちよくなかったり、逆に嫌な感じがする。

・イライラしたりすると痛みが増したり、月経不順が酷くなる。

・生理前に胸や脇、乳房が張る。

・月経がスムーズに来潮しない。

・月経の血量は少なく、血の塊が混じることもある。

・生理周期は不安定で、早くなったり、遅くなったりする、など。

 

=その他の随伴症状=

・口が苦いことがある。

・ため息をよくつく。

・偏頭痛がある。

・生理前はイライラしたり怒りっぽくなったり、頭痛や目の痛みを伴う事がる。あるいは生理前に落ちこんだりと精神が不安定になる。

・情緒不安定・気分屋。

・ガスやゲップが出る。

・お腹が張る、など。

 

=養生法=

このタイプの方は気を流す養生法を実践しましょう。

[ツボ刺激]

 「太衝」:気を流す効果の高いツボです。足の甲にあり、親指と人差し指の付け根の骨が交わる所の少し前にあります。

「膻中」:両乳首の中間点。摩ったり、軽く叩いたりしましょう。

 

※両ツボとも、刺激をしている時に一緒に深呼吸をすると効果が高まります。

 

[食べ物]

牛乳・牡蠣・あさり・しじみ・しゃこ・しらす・かに・みょうが・三つ葉・春菊・パセリ・セロリ・シソの葉・からしな・にら・ねぎ・小松菜・菊花・キャベツ・かいわれ大根・大根・かぶ・ラディッシュ・ザーサイ、みかん・グレープフルーツ・ゆず・キンカン・レモン・しょうが・こしょう・八角・ウイキョウ・ペパーミント・ローズマリー・タイム、など

※中医学ではミントやシソのような香りのあるものが「気」を流すと考えており、ストレス解消に役立つといわれています。

 

[お茶]

シソ茶・ジャスミン茶・ミントティー・タイムティー・ローズマリーティー・カモミール茶、など

 

[その他]

・ストレッチや深呼吸などは気を流す働きがあります。

・普段の生活では出来るだけストレスを溜めないようにしましょう。ドライブ、ショピング、映画鑑賞など、ご自分にあったストレス発散法をみつけましょう。

・柑橘系の香りは「気」の巡りを改善させます。みかんやレモンの皮などを入浴剤としたり、お部屋の芳香剤としてみてもいいでしょう。また、アロマを代用する方法もあります。

・不規則な生活はいけません。

 

 

②『くよくよ』タイプ

中医学でいう「血虚証」(心血虚・肝血虚)といわれるタイプです。

「血」の不足により起こるタイプです。

中医学では、「血」は精神を安定させる働きがあると考えます。ですから、「血」が不足してしまうと精神が不安定となってしまいます。又、常に悩み事があったり、精神的な疲労があると「血」を消耗してしまい血の不足が起ります。

 

『精血同源』といい、「精」と「血」は深い関係にあり、どちらかが減ってしまうと、もう片方も減ってしまうことがよくあり、高齢者に多くみられます。

たとえば、加齢により、「精」が減ってしまい、それに伴い「血」も減ってしまうと、くよくよするなどの精神症状を伴った更年期障害となったり、何らかの原因により、「血」が減ってしまい、それに伴い「精」が減り、更年期の症状が早期に発症してしまうといった事があります。

 

血虚をまねく主な原因としては、月経・主産・手術などの際、過剰の出血をした・流産、中絶、高齢出産、目の酷使・夜更かし・過剰な精神疲労などがあります。

 

=生理痛の特徴=

・月経の血量は少ない。

・月経の血の色は淡い。

・月経の血の質は希薄。

・生理期間は短め。

・生理は遅れ目。

・生理の終わり頃から終了にかけて、腰やお腹が痛んだり、重い。

・痛む部位を揉んだり、さすったりすると気持ちがいい。

・生理中は疲れやすく、眠りが浅くなったり、気分が落ちこむ、など。

 

=その他の随伴症状=

・髪に艶がなく、枝毛が多い

・顔に色艶がない。

・唇や爪の色に赤みがない。

・息切れや動悸がする。

・めまいやたちくらみがある。

・ウツ気味・不安感が強い・心配性・落ち込みやすい。

・決断ができない。

・感受性が強く、繊細で傷つきやすい。

・コンプレックスや悩みがある。

・不眠や嫌な夢を多くみる。

・舌がしびれるたりビリビリ痛む、など。

 

=養生法=

このタイプの方は、「血」を増やす養生法を実践しまよう。

[ツボ刺激]

「三陰交」:内くるぶしから、手の指3本分あがったところの骨際を痛気持ちいい位の力で押しましょう。

 

[食べ物]

なつめ、プルーン・ブルーベリー・いちじくなどのドライフルーツ

くるみ・松の実・ピーナッツ・アーモンド・クコの実・黒ごま・黒豆・ひじき・

レバー・にら・など

 

[お茶]

なつめ茶・ほうじ茶・杜仲茶・麦茶・はとむぎ茶・あしたば茶・マテ茶、など

 

[その他]

過労は禁物です。また「血」は食べ物によって作られますので、上記を参考にきちんとしたバランスの良い食事をして下さい。特に生理中~生理後は「血」を消耗していますので注意が必要です。またこの時期はなるべく脳や目の使い過ぎは血を消耗してしまいますので避けた方がよろしいです。

また、食事だけでなく睡眠もきちんととって下さい。夜更かしは禁物です、いくら睡眠時間が多くても、中医学では12時前に寝ないと良い睡眠とはいいません。

 

 

③『冷え』タイプ 

中医学では「陽虚」といわれるタイプで、体を温める力がないタイプです。

もともと体を温める力がなかったり、若いときに体を冷やしたり、冷たい物の摂り過ぎにより起こります。

体を温められないので、冷えを中心とした症状が現れます。

 

=生理痛の特徴=

・生理が重いが温めると軽くなる。

・経血の色が黒っぽい。

・生理中に体が冷える、など。

 

=その他の随伴症状=

・手足がいつも冷たい・冷え症。

・下半身が冷える。

・わりとむくみやすい。

・2回以上夜間尿がある。また冬冷えると多くなる。

・顔色が白い、など。

 

=養生法=

このタイプの方は、冷えを追い出し、体を温める力を補いましょう。

[ツボ刺激]

「関元」:おへそから指4本分下にあります。 カイロやお灸で温めてたりあげて下さい。

「足三里」:膝の皿の外側の下から指4本分下ったところにあります。痛気持ちいい位の力で押しましょう。

※尾てい骨の周辺にも、下半身を温めるツボがありますので、尾てい骨の上にカイロをはっておくのもよいでしょう。

 

[食べ物]

もち米・羊肉・鹿肉・牛肉・鶏の手羽先・豚の耳・なまこ・えび・ふかひれ・魚の皮・からしね・ねぎ・ピーマン・らっきょ・にら・ししとう・ザーサイ・かぼちゃ・ながいも・くり・くるみ・唐辛子・からし・わさび・生姜・にんにく・こしょう・シナモン・黒砂糖・八角・ウイキョウ・酒(焼酎・赤ワインなど)・ごま油・オリーブオイル・豆乳・ココナッツミルク・杏仁など。

 

[お茶]

紅茶・生姜はちみつ茶・よもぎ茶など。

 

[その他]

・とにかく体を冷やさない事がだいじです。家事・外出・食べ物など気をつけて下さい。

・食べ物は生ものや冷たい物の摂り過ぎに注意しましょう。野菜も出来るだけ生は避けましょう。

・お風呂は体を温めてくれます。心臓病などが無い方はぬるめのお湯に長めにつかり身体をじっくり温めましょう。また、入浴剤を使用してもいいですね。

・生理中や出産後は、冷えが入り込みやすくなっています。若い方は、アイスなどの冷たい食べ物や、薄着や夏場の冷房など体を冷やさないように気をつけましょう。特に、下半身を冷やすのはよくありませんので、この時期はスカートは避けた方がよいでしょう。また、出産後の水仕事は出来るだけ避け、下半身を冷やさないようにして下さい。

・下半身が冷えて、顔や上半身がほてるという方は、足湯がおすすめです。

 

 

⑤    『のぼせ』タイプ

中医学では「陰虚」といい体を潤せないタイプです。

もともと、陰虚体質であったり、寝不足など不摂生な生活を続けている方に多く起こります。

体を潤せないので、ほてりが中心となった症状が現れます。

=生理痛の特徴=

・経血量が少なくねばねばしている。

・経血の色が濃い、など。

 

=その他の随伴症状=

・やせ型

・寝汗がでる

・手のひらや足の裏がほてる

・頬が赤い

・便秘がちで、便がコロコロしている。

・舌の苔が少ない。又は舌の苔に亀裂が入っている。

・皮膚が乾燥している。

・喉は乾くが、あまり水分を摂りたいとは思わない。

・排卵期や性的興奮時の分泌物が少ない、など。

 

=養生法=

このタイプの方は、潤いをます養生法を実践しましょう。

[ツボ刺激]

「太谿」:内くるぶしとアキレス腱の間

「復溜」:内くるぶしから、指3本上で、骨とアキレス腱の間

これらのツボを痛気持ちいい位の力で押しましょう。

 

[食べ物]

とうがん・トマト・きゅうり・すいか・梨・メロン・夏みかん・白きくらげ・ゆり根・はちみつ・牛乳など

 

[お茶]

緑茶・ウーロン茶・菊花茶など

 

[その他]

・熱いお風呂はのぼせを悪化させますので、ぬるめの温度設定にしましょう。また、このタイプの方はサウナは向きません。

・辛い物の摂り過ぎも、のぼせを悪化させますので注意して下さい。

 

《まとめ》

老化は誰にでもおとずれ、誰にも止めることはできません。

しかし、若い頃からの養生や、更年期の症状に合わせた養生を実践することにより、老化のカーブをゆるめたり、症状を軽減することは出来ます。

症状が重い場合は、治療をすることにより、症状の軽減をはかりましょう。

又、プレ更年期の方は、今の内から更年期に備えておきましょう。

 

最後までお読みになり有難うございました。

辛い症状でお悩みの方は、一人でお悩みにならずに、お気軽にご相談下さい。

どうぞお大事になさって下さい。

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