腎の働き

 腎の代表的な働きには、①体内の水分代謝に関わる、「主水作用」 ②生きるためのエネルギーを溜めておく「蔵精作用」 ③呼吸に関わる「納気作用」などがあります。

 

 

①「主水作用」

 体内を巡った老廃物を含んだ水液は腎に集められます。ここで腎は集められた水液の中から再利用できる水液を吸収し肺へ送り、再利用出来ない水液は膀胱に送り尿に変化させ排泄させています。

もし、この働きが弱まってしまうと、浮腫み、尿量の減少、頻尿、失禁などの、水液代謝の低下や排尿に関する異常が現れてします。

 

 

②「蔵精作用」

 「蔵精作用」とは、腎の「精」を蓄える働きをいいます。

「精」については以前紹介しましたが(詳細については「精とは」を参照)成長や生殖機能に関わったり、骨・歯・髪・耳・脳などを栄養している物質で、一言で表すと「人が生きる為に必要なエネルギー」です。

腎はこの大切な「精」を蓄えています。このことから「精」は「腎精」とも呼ばれます。

 

 人は既に胎児の時には、お父さんとお母さんから精を受け継ぎ腎に蓄えています。これを「先天の精」といいます。

出生後は呼吸や授乳をすることで栄養素を吸収し、腎へ送り「腎精」を補充します。これを「後天の精」と呼んでいます。

生後「腎精」は「後天の精」の補充を受け、徐々に旺盛になってゆきます。この間、体はどんどん成長してゆき、やがて女性は月経が始まり、男性は精子の生成が盛んになります。

その後「腎精」はピークを迎え、身体が最も強壮な時期となります。

中年期に入りしばらくすると、少しずつ「腎精」は衰えてゆき、老化が始まります。

これらは病気ではなく正常な生理現象であり、正常な「腎精」の変化です。

 

しかし、異常な「腎精」の変化や、体質的に「腎精」が不足している場合は、様々な症状が現れ、場合によっては治療が必要となります。

例えば、「腎精」が増さなければならない幼児期に「腎精」が不足してしまうと、発育が遅れたり、「腎精」が旺盛な青年期に「腎精」が不足してしまうと、初潮の遅れ、精力の減退・男女の不妊・耳鳴り・難聴・足腰が重だるいといった症状が現れます。

また、通常より早い時点で「腎精」が減り始めてしまうと、まだ老人とは呼ぶには早い時期に、足腰が衰えたり、健忘などの早期老化現象が現れます。

あるいは、初老期に「腎精」の衰えが急だったり、衰える際に陰陽のバランスが過度に崩れると、更年期障害を起こします。

 

 

③「納気作用」

 中医学では呼吸は肺だけではなく腎も関わっていると考えます。

勿論、呼吸の中心は肺が行いますが、腎も呼吸を補助しています。

特に深い呼吸は腎の力が必要になります。

そして、肺が呼吸によりとり入れた気(自然界の清気)を腎に溜め込み、「腎精」を補充します。この一連の働きを、腎の「納気作用」といいます。

もし、腎の「納気作用」が弱まってしますと、息を深く吸い込むことが出来なくなり、浅い呼吸になってしまいます。また、更に酷くなると、呼吸困難や喘息などが起こってしまいます。

 

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