よく街を歩いていると、「経絡整体」とか「経絡マッサージ」といった看板を目にすることがあります。
皆さんも「経絡」という言葉を目や耳にされた方も多いと思います。
「経絡」とは一言でいうと、「気・血・水」を全身へ運ぶ通路で、全身に網目の様に張り巡らされています。
経絡の走行は「内外を貫いて、上下を通す」といわれます。
この内外とは{内臓と体表}いう意味で、上下とは{頭から体幹や手足の末端}という意味です。つまり体の隅から隅までを繋いでいるのが経絡です。
そして「気血」が経絡を通り全身へ運ばれることで、体は隅々まで栄養されるのです。
しかし、「経絡」は血管や神経の様に目に見ることは出来ませんし、検査機器を使っても画像や数値でも現せません。そのため現代医学では、「経絡」の存在はありませんが、中医学では、「気」と同様に目には見えなくても大切なものなのです。
尚、経絡とは別に、血が流れる「血脈」、水が流れる「三焦」があります。
このことから、経絡には気血水が流れますが、流れの中心となるのは気ということになります。
=経絡の働き=
「気血水」の通路となっている経絡ですが、単純に「気血水」の通路だけではありません。経絡は様々な働きがあります。今回は代表的な働き3つを紹介します。
ⅰ、生理作用
冒頭でも書きましたが、経絡は全身へ「気血」を運び、全身を栄養し、正常な生理状態を保っています。
ⅱ、病理作用
経絡は、気血以外に病気も運んでしまいます。
例えば、風邪の初期では悪寒や発熱が現れ、その後お腹の調子が悪くなったりと内臓に関する症状が現れたりします。
中医学では、風邪のウイルスのように病気の原因が体の外から襲ってくるものを外邪といい、風邪の初期の悪寒や発熱が起きている時は、外邪がまだ体表に在ると考えます。ところが、その時点で治らないと外邪は経絡を通して体内に入り込んでしまい内臓に関する症状が現れます。
他には、チョコレートなどの甘い物を食べ過ぎると口の周りに吹き出物が出来る方がいます。
これは、中医学では甘い物の食べ過ぎは、体内で余分な水分を作ってしまうと考えます。体内の余分な水分が経絡を通して体表へ運ばれてしまうと吹き出物などが出来ます。
ⅲ、診断作用
よくマッサージなどで、「このツボを押して痛いと○○が悪い」などと言われた方もいるかと思います。
内臓などの不調は、経絡を通して体表のツボなどに痛みや硬結といった症状で現れます。
つまり、経絡は内臓などの情報を体表へ伝達してくれています。
治療者これを利用して患者さんの診断ができます。
ⅳ、治療作用
鍼灸、按摩、漢方薬は、経絡を通じてその効果が病んでいる部位へ運ばれます。
鍼灸や按摩の治療で、患部から離れたツボに刺激をしても病気が治るのは、経絡により治療効果が伝わるからなのです。
=ツボと経絡=
例外はありますが、多くのツボは経絡の上にあります。
冒頭で経絡は気血水を運ぶ通路と説明しましたが、この経絡上にツボがあることで、体内の気はツボを通して出入りすることが出来ます。
言い方を変えれば、ツボを通して体内と体外は結ばれております。
したがって、ツボに体内の情報が現れる事があれば、ツボを刺激することで体内の治療ができるのです。これは、前者が先程紹介した「診断作用」で後者が「治療作用」になります。
=経絡の構成=
「経絡」とは、「経脈」と「絡脈」を合わせた言葉です。
「経脈」は最も重要なルートで、体を上下に流れます。
「絡脈」は経脈から別れ出たルートで、網目の様に全身に縦横に流れます。
経脈には、「十二経脈」「奇経八脈」「十二経別」「十二皮部」「十二経筋」があります。
十二経脈は12本の経絡ですが、体の左右にあるので、トータルすると24本になります。十二経脈はそれぞれ特有の臓腑と繋がることから治療上大切な経絡となります。
「奇経八脈」には、「督脈」「任脈」「帯脈」「衝脈」「陰維脈・陽維脈」「陰蹻脈・陽蹻脈」があります。
奇経八脈の中で特に診断や治療で重要となるのが、「督脈」「任脈」です。
十二経脈とは違い特定の臓器にはつながっていませんが、その走行や重要なツボが両脈上にあることから診断や治療では重要視されます。
督脈は背中の中央(背骨の上)を通り脊髄や脳に繋がります。
任脈は体の前の中央を通り生殖器に繋がっています。
絡脈には、「十五絡」「孫絡」「浮絡」があります。